ブログ DM人生50年、ここだけの話

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第1回 DMでいちばん重要なキーワードは? (2020.8.31)

 

DMは「レスポンスがすべて」というドライでシビアな世界
 いきなりですが、DMの目的は「レスポンスの獲得」です。お客様からの反応です。具体的にはお問合せやお申込みなど、お客様からの購買行動(アクション)ですね。この点が、イメージをお客様に伝えるだけの一般広告といちばん違う点です。このことは、一方では大変厳しい現実を生むことになります。それは何かというと、レスポンスの獲れないDMコピーライターやデザイナーは「ダメなクリエイター」としての烙印を押されてしまうということ。どんなに気の利いたコピーを書いても、どんなにきれいなデザインを作っても、そのDMのレスポンス率が悪ければ「ダメなクリエイティブ」と判定されてしまうのです。
 勝ち組に残ったクリエイティブはウィナー(勝者)として次回のDM制作に採用されることになりますが、ルーザー(負け組)に入ってしまったクリエイティブはもうそれでおしまい、お蔵入りとなるのです。その判定基準はDMを受け取ったお客様の反応、すなわちレスポンス率という厳格な数値によって決定されてしまうのです。

レスポンス率を上げる最重要キーワードは「ベネフィット」
 ベネフィットは直訳すると利益という意味になります。正式には消費者ベネフィット(Consumer's Benefit)といって、つまり、その商品なりサービスなりが消費者にもたらす利益、消費者にとって何か得になるものを指します。
 私が以前、外資系広告代理店でDM専門のコピーライターとして働いていた時分のことですが、アメリカ本社から来日していたエグゼクティブの前で、あるクライアントのためのプレゼン・リハーサルを行ったことがありました。一通り説明を終えるとエグゼクティブは私に向かって「What’s a benefit?」(その商品のベネフィットは何?)と質問してきたのです。そんな簡単な質問などすぐに答えられるだろうというその場の雰囲気でした。しかし時代的にその頃はまだ「ベネフィット」という概念が確立していなかったこともあり、私は言葉に詰まってしまって結局何も答えられませんでした。そんな苦い経験があります。
 今でこそベネフィットがいかに重要であり、DMのレスポンス率を上げるカギであるかを痛いほど認識しているのですが、当時のプレゼンでの必須項目はまず商品説明と、せいぜいUSP(Unique Selling Proposition=すぐれた商品特徴)を説明するまでの段階に留まっていたのですね。

なぜ、ベネフィットが重要なのか
 では、なぜベネフィットがDMのレスポンス率を上げるために重要な役割を果たすのかについて、少し掘り下げて考察してみましょう。ベネフィットを理解するためには、ある1人のお客様が1通のDMを受け取った場面を想像してもらうとわかりやすいです。中を開けてみると、ある新商品の案内でした。その商品の特徴がきれいな写真やデザインとともにこと細かく、しかもわかりやすく説明してあります。「なるほど」とうなずきます。その新しさに「これはすごい」と思うかもしれないし、表示された値段についても「まあ、こんなものかな」という感じを抱くかもしれません。しかし、お客様の反応はここまでです。DMはその場で捨てられることはなくても、多くの場合いずれは忘れ去られてしまう運命となります。
 では、そのDMがこんな内容だったらどうでしょう。商品は先の商品とまったく同じです。ただ、説明の仕方がまるで違っていました。商品特徴だけでなく、お客様にもたらすベネフィットが具体的に、かつ魅力的に表現されていたのです。その商品を使うことにより、自分の生活がどんなに便利になり、豊かなものになるのかが手に取るようにビビッド(鮮明)に伝わってきたのですね。「欲しい!」と思う気持ちが起きてきます。値段を確認します。やがて「よし、買おう」と決心する方向に向かうことになります。
 上記の二つのDMの運命を分けたのはただ一点、ベネフィットの「ある」「なし」です。ベネフィット表現がうまくなされたDMと、そうでないDMの差は著しいものがあります。要するにベネフィットのないDMは魅力がゼロのDMであるということがおわかりいただけましたでしょうか。前者は「なるほど」とはなっても「欲しい!」とはなりにくい。だからお金を払って買おうなどという気には到底ならないのです。お客様が買うのは、実は商品ではなくベネフィットだったのです。
 単なる商品説明からベネフィット表現へと高めていくにはどうすればいいのでしょうか。その方法を極めることは「DMクリエイティブ戦略」の中心課題でもあります。

 次回は、DMにおける最重要キーワード「ベネフィット」について、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。ご期待ください。

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